天井を見上げると雨漏りのシミが! いつの間にできたんだろう…
お客様から私たちの元にSOSが届きます。以前、弊社にリフォーム工事をご依頼いただいたお客様。「補修工事でも相談に乗ってもらえますか?」工事完了後10年ほど経ちますが、頼るところがないということで相談のお電話をいただきました。私たちも、家のことを知っているだけに心配です。新規で補修工事を請けることはありませんが、私たちの対応に安心できる何かを感じて頂けたのかもしれません。時間を確保し、訪問することにしました。
さて、雨漏りの原因は様々です。雨は上から降ってきて下に流れていくものですが、台風の時など、稀に横から吹き付ける場合があります。和風住宅の場合、構造によっては外壁と軒裏との間に隙間があることもあり、台風時の雨水浸入は止めようがないことも…。これは不可抗力の域ですね。一時的なものであれば、雨が吹き込んだとしてもすぐに乾燥しますので、大きな問題はありません。
では、通常の雨で雨漏りする原因はどこにあるのでしょうか。「瓦が鱗のような役割をして、雨の浸入を防いでいる」と思われる方も多いかもしれませんが、実際に雨の浸入を防いでいるのは、その下の防水紙です。勾配がきつい屋根面であれば、たとえ瓦の内側に雨が浸入したとしても、防水紙の外側をすんなり流れていくので問題ないのですが、勾配が緩いと流れる勢いが小さくなり、とどまりやすくなります。
また、複雑な屋根になればなるほど取り合い部分が多くなり、雨漏りリスクは大きくなります。この、雨漏りリスクの高い取り合い部は、工事の仕方で雨漏りを未然に防ぐこともできますし、逆に、当然に雨漏りすることもあるのです。そう考えると、設計段階から雨漏りリスクを考えて、取り合いの少ない単純な屋根を計画し、工事段階では慎重かつ丁寧に、屋根下地の防水層を確保することが重要だという事になります。それが実行されずに雨漏りしたとなると、これは人災と言ってもいいのかもしれません。
雨漏りの原因を追究することは本当に困難です。晴れた日に、怪しい部分にホースで水をかけてみないとわかりません。怪しいと思われるところ以外から雨水浸入があり、遠く離れた部屋の内部に雨漏りのシミを作ることもあります。
新築時の業者さんが故意に手抜きをしたわけではないのでしょうが、防水紙の重なり代が足りなかったとか、板金の立上り処理が不足していたとか、ちょっとしたことが原因で雨漏りが発生することもあるのです。
下地の状況は、瓦で覆ってしまうとわからなくなります。すぐに雨漏りの症状がでない場合でも、隠れた木部は腐朽が進んでいるかもしれません。木造住宅にとって、床下の湿気対策と雨水浸入の防止は非常に重要な課題です。だからこそ、設計段階でも工事段階でも配慮を怠ってはいけないのです。
前出の雨漏り事例は、無事解決しました。バルコニーの笠木手摺から浸入した雨水が、内部の構造材をつたって階下への雨漏りとして出現していたのです。笠木部分をコーキングで応急処置することもできますが、間違った工事の手順が雨漏りを誘発しているのは明らかであり、思い切って、壁を解体して根本原因を追究し、作り直すことになりました。
職人さんの技量や知識に任せっぱなしの現場は、とかく問題が起こりやすいものです。彼らは、自分の持ち分だけを責任もって納めるのが仕事です。絡み合う他の工種について、深く理解しているわけではありません。だからこそ、一貫した指揮系統で現場を管理する建築士が必要なのです。