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【福岡発】中古住宅の構造躯体に悪影響を及ぼす「生物的劣化」の話

建築のプロが好んで読む専門誌があります。

年間契約で毎月購読しているのですが、実際に起こった事故(施工不良による不具合等)やクレーム事例を取り上げ、どこにその原因があったのか、どのように対応すれば良かったのか、示唆に富んだ内容が盛りだくさん!当たり前だと思っていたことが実は不具合の要因になるケースもあり、はっとさせられることもあります。

 

さて、そんな記事の中に中古住宅の劣化事象の見極め方についてまとめたものがありました。新築してからの経過年数によって劣化が進むのは仕方のないこと…内覧に行けば、天井に雨漏りのシミをみつけることもありますよね。でも、外観上気になる部分があったとしても、内部構造に必ずしも問題があるわけではないのです。逆に、外観上は何ともないように見えて、その実、内部の構造体は「生物劣化」が発生していることもあるのです。

 

さて、劣化について考えてみましょう。住まいの劣化をその原因からわけてみると、大きくは「物理的劣化」「化学的劣化」「生物的劣化」の三つに分類することができ、中には複数の原因から起こる劣化事象もあります。簡単に言うと、「物理的劣化」は生活の中で繰り返し力を加えることにより発生した摩耗など、「化学的劣化」は化学変化による変質、「生物的劣化」は菌類による腐朽や蟻害などを指します。「生物的劣化」は住まいの劣化現象のなかでも最も重要なものです。何故かというと、菌類にしても白蟻にしても直撃するのは木部、つまり木造住宅の内部構造体を直接劣化させる原因になるからです。外観的には何ともないように見えても、床下や壁内で「生物的劣化」が進んでいるかもしれません。怖いですよね。劣化が進むと耐力的にも確実に落ちますので。

 

では、「生物的劣化」を予防するためにはどうすべきか。菌類にしても白蟻にしても、好んで生息する環境というものがあり、それを左右するのは湿気です。常に湿度が高い環境にあると、菌類や白蟻が発生し、爆発的にその数を増やし、構造躯体に悪影響を及ぼしかねない状態に陥ります。特に被害が多い部位は床下です。古い住宅はスラブ基礎(ベタ基礎)でないケースも多いので、地面からの湿気と換気の悪さが相まって、常に湿度の高い閉鎖的な空間になっていることが多いのです。また、浴室からの水漏れや雨水の浸入も湿度上昇の原因になります。

 

木造住宅は、構造躯体が木という有機物なので、とにかく湿気をコントロールし乾燥状態を保つことが大切なのです。あまり状態が良くないと、リフォームでは限界があることもあります。立地や工法が「生物的劣化」を招いているとすると、一時的な劣化改善はできても根本的な解決は難しくなるからです。わざわざそんな物件を購入することないですよね。何に重きをおくべきか、中古住宅を見極めるためには建築のプロの目も絶対に必要だと思いますよ。