家庭を切り盛りするためにかかる費用の支払いは、手元のお財布から支払う現金払いのものと、銀行口座から自動で引き落とされるものに大別されます。特に、固定費と言われる毎月同じ額の支払いに関しては、自動引き落としの手続をとっている割合が高いのではないかと思います。その最たるものが家賃、または住宅ローンの返済でしょう。
さて、先日のコラムで「返済負担率」の話をしました。返済負担率は、年収に対するローンの年間返済額の割合のことですが、これは金融機関が勝手に設定した指標の一つであり、「返済負担率ギリギリまで住宅ローンの返済に充てても大丈夫!」という意味ではないので注意してください!
そもそも「年収に対する割合」というのが曲者なのです。一般的に年収とは、社会保険料や源泉所得税、その他(住民税や積立金など)が差し引かれる前の「総支給額」を指します。つまり、年収すべてを自分勝手に使うことはできないわけですね。自分の口座に支給される手取り額は、上記のようなものが天引きされた後の額面でしかありません。
計算してみましょう。年収500万円の人が、返済負担率30%ギリギリで住宅ローンを組んだ場合を想定します。教育ローンや自動車ローンはないものとすれば、年間返済額は150万円になります。12で割ると毎月の支払額は125,000円です。では年収500万円のうち、手取りとして自由になるお金はどのくらいあるのでしょうか?天引きされる額を全体の15%と想定すると、年間の手取り額は425万円になります。そのうち150万円を住宅ローンの返済に充てることになるので、家計に影響する実質的な返済負担率は35%を上回る結果となります。月に均すともっとわかりやすいかもしれません。単純に12で割ると手取り月額は35.4万円、そのうち12.5万円は住宅ローンの返済に消えますから、残りは22.9万円になります。ここから、生命保険料や通信費・水道光熱費など、必ず支払いが発生する分を差し引いた残りで毎日の生活を送らなければなりません。しかも、将来の教育費や老後資金の貯蓄も同時並行で行う必要があります。思ったより余裕がないと感じませんか?
みなそれぞれに、自分の生活に見合った返済負担率というものがあるのです。銀行が、「返済負担率からすると○○円まで貸出し可能ですよ!」と言ったとしても、一呼吸置いて考える時間をもちましょう。借りられる額は返せる額ではないかもしれません。ここをちゃんと考えないと、マイホームでの新しい生活が楽しめなくなってしまいます。住宅ローンの支払いに追われるだけの生活なんて、何のためにマイホームを購入したかわからなくなってしまいますよね。無理のない返済計画をたて、完済のその日まで淡々と返し続けることができてこそ!後悔のないマイホーム購入の実現といえるのです。