道について、統一的に定められた法律はありませんが、関係する法律はいくつもあります。通行権や地役権を定めた「民法」や、都市計画上の建築条件として道に関する規定が明記された「建築基準法」、あるいは、道路行政の基本を定める「道路法」や、道路交通のルールを定める「道路交通法」などです。
そもそも、みんなが通行する道はどのようにしてできたのか。元をただせば、道は誰かが持っていた土地に他なりません。日本昔話の山林や田畑の様子を思い浮かべてみてください。一番通りやすい場所をみんなが通行することで、自然の地形をたくみに取り入れながら自然発生的に道はできたのです。本来の所有者が権利を振りかざすこともなく、やがてその土地の管理は公の担うところとなり、もともとの土地の所有者は公共の福祉に寄与すべく道を提供したわけです。これが公道(国道、県道、町道など)なんですね。
道の役割は元来、人の通行だけでした。が、時代が移り経済の基盤が変わった現代では、人や車の通行はもちろん、上下水道管などの埋設、電柱やポストの設置、通風・採光・防災に必要な空間確保など、その役割は多岐にわたっています。いずれも、暮らしを形成するために必要なことであり、役割を全うさせるには各種法律で定められたことをみんなで守っていくべきなのです。それなのに、自分勝手な解釈でルールを守らない人がいます。
道にはもう一つ、「私道」と呼ばれるものがあります。私道は公のものではありませんから、通行人との利害関係が相反するためにトラブルになることもあります。私道は私人の所有物なので、所有者の承諾なしに他人が勝手に通行できないというのが原則です。原則に則れば、その私道の所有者から通行権を得ておかないと通行できません。通行権が認められるのは契約による使用貸借等の場合であり、不特定多数の通行を認めるものではありません。通行権が認められる場合には、裁判所に訴えて通行妨害を排除してもらう事ができますが、通行権が認められない場合は、私道所有者による通行妨害を甘受せざるを得なくなるというわけです。
昨今、ワイドショーで取り上げられた私道の通行を妨害する所有者たちを思い出してみてください。道の成り立ちを考えれば、そこに人の通行があるならば、昔の地主のようにおおらかな気持ちで提供できないものかと思ったりもしますが、彼らにしてみれば、自分が所有する土地を不特定多数の人が通行の契約もせずに勝手に通行しているのを毎日見ているわけですから、腹立たしいわけです。沸点を超え通行妨害を断行したとしても、それを取り締まる法律はないのでトラブルが解決することは困難を極めるということになります。
中古住宅の物件情報には、私道に関することを記載する欄があります。私道を介してしか公道にでられないという不安定さを、あなたは受け入れられますか?価格や間取りに目を奪われがちですが、物件情報を深く読み解きリスクを想像することも必要なんですね。