福岡は長い間、地震が起きない地域として認識されてきました。台風はちょくちょく通過するものの、大きな地震が起きたことはありませんでした。が、平成17年3月、福岡県西方沖地震が発生しました。震源地は玄界灘、地震の規模はマグニチュード7.0で最高震度は6弱という、福岡県民の誰もが経験したことのないような大きな揺れが突然に起きたのです。
私たちの会社は、それより前から木造住宅の耐震診断や補強工事に力を入れていました。その当時は無料で診断を行っていたこともあり、興味本位で依頼する人もいて、「福岡は地震が起こらない地域だから補強なんて必要ないんだよ!タダだから受けてみたのさ。」と、はっきり断られることもたくさんありました。不安をあおって工事を強要しているなんて言われてはたまりません。住民本人が耐震補強の必要性に気付かない限り、費用を払って工事をする意味はありませんので放っておくしかありません。
そんな中、福岡県西方沖地震が発生したのです。耐震診断ができる建築会社はまだ少なかったので、問合せや診断申し込みの電話が急に増え、平成17年は対応に苦慮しました。が、診断を受けた人がみんな補強工事をするのかというとそうでもない。補強工事は平均で200万前後かかると言われています。具体的な工事方法や費用を説明すると、工事の煩わしさや費用の工面に抵抗を覚えるのか、診断を申し込んだ時のモチベーションがみるみる下がってしまうようです。
これは仕方のないことですね。人気のリフォームは、快適さが増す設備機器の交換や内装工事が主流です。それに比べて耐震補強工事は地味なリフォームです。壁や基礎を補強するのに結構な費用と労力がかかるのに、毎日の生活が何ら良くなるわけでもない。費用に対する効果を実感しにくいリフォームなのです。ひとたび地震が起これば大変なことになる ということはわかっていても、もしかしたらこのまま起きないんじゃないか、起きても自分だけは大丈夫なんじゃないか という根拠のない考えが頭をもたげ、優先順位を下げてしまうのです。
日本全国各地で発生する地震の様子を見ていると、日本に住んでいる限り安全な場所はないのかもしれないなと思います。いつ何時どこで起きてもおかしくない地震、それに対抗するためには、まずは倒壊しない家に住むことです。いくら家具の固定をしても防災グッズを集めても、家に潰されて命を落としては何にもなりません。補助金制度や税制優遇措置も充実してきました。それくらい真剣に検討すべきことなのです。
中古住宅を購入してリフォームをするなら、是非、耐震診断を受け適切な補強計画も練り込んだリフォーム案を検討してください。費用は確かに掛かりますが、あなたとあなたの家族を守る一番大事なことなのですから。