2017年4月1日に、「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)」が施行されました。
建築業界においては歴史的な法改正と言われいます。省エネに関しては今まで何度も改正が行われてきましたが、対象となるのは公共物や非住宅系のものが中心でした。が、いよいよ本腰を入れて、建築物すべての省エネ性能を向上させるために国は動き出したのです。小規模な住宅においても「省エネルギー性能」の最低基準を定め、遵守することを求めています。
今、住宅に求められる質の三大要素は「耐震」「省エネ」「長持ち」です。地震大国である日本では、まずは耐震性能から義務化が行われ、これまで大地震が発生して建物に甚大な被害が出るごとに基準強化がなされてきました。一番新しい改正は平成12年(2000年)です。設計の指標となる建築基準法に明記されています。既存住宅の耐震診断においても、この現行基準で建てられた住宅は診断対象外とされ、倒壊しないものと認識されています。最低限の品質を確保する法的な基準が存在するからです。
さて省エネ性能はというと、今までその最低基準がなかったのです。「え!?家の省エネルギー性能って最低基準無いの?」と思われるかもしれませんが、驚くことに現段階においても、日本では小規模住宅に関する省エネルギー性能の最低基準は義務化されていないため、無断熱の家でも合法ということになっているのです。この点が大幅に改正されます。昨年の施行から段階的に対象を広げていく計画で、2020年以降のすべての新築物件に対して基準を満たすことを義務化するのが最終目標です。
環境意識が高まっている昨今、冬に暖房が不可欠な環境にありながら無断熱でも家が建てられる国って、かなり遅れてると思いませんか?でもこれは、環境意識の低さばかりが問題なのではなく日本人の持つ忍耐力に依存しているような気もします。都市計画に直接影響する集団規定は重要だけど、快適さの基準は後回しでも良いという考え方があったのかもしれませんね。
国交省の調査によれば、2015年に新築された小規模戸建て住宅のうち53%の住宅は既に省エネ基準を満たして建築されていたそうです。未だ小規模住宅に関しては努力義務とされている省エネ基準ですが、実務に携わる建築会社は、快適な住空間を作るためには省エネ(断熱、遮熱、気密)が欠かせないとわかっているのです。残り47%の無断熱住宅は2020年からは新たに生まれることはありません。言い換えれば、たった5年で現行基準を満たさない住宅になってしまうということです。