未登記部分がある場合は要注意
不動産の販売チラシを見ていると「増築未登記あり」という記載を目にすることがあります。新築でも増築でも、建物を建築した場合は完成後1か月以内に登記する約束事があるのですが、守られていないケースもあり、このような場合は注意が必要です。
まずは、増築未登記部分の面積が重要なポイントになります。増築未登記部分の面積を加えてしまうと建ぺい率・容積率を超過してしまうケースがあるからです。
違法建築と既存不適格
建築基準法上は、防火地域及び準防火地域外であれば10㎡以内の増築は確認申請を必要とせず、適法かどうかの事前確認が成されないまま増築されることがあるのです。もちろん、建築士としては、確認申請が必要ないからと言って集団規定に抵触するような設計をしていいわけがないのですが、現実的には建築士不在の増改築工事も行われているわけで、結果、既存不適格状態になってしまうケースが散見されるのも致し方ないことなのかもしれません。
しかし、定められた建ぺい率・容積率を超過してしまう場合には、担保価値の観点から融資を受けられない可能性もありますし、最悪、監督官庁から是正命令が出る可能性もあります。また、再建築をしようとした際にも、同規模の建物が建てられない、といった事態に陥ることも予想されます。そもそもが規定オーバーなのですから、ね。更に、増築未登記部分について、役所が把握していなかった場合、後日、固定資産税の追徴があるかもしれません。本来払わなければならなかった増築部分について、遡って請求される可能性もないとは言えないのです。
未登記部分の真の所有者は誰?
もっと怖いのは、増築部分の所有権が、母屋同様売主にあるということを確認する方法がない点です。増築部分について、真の所有者であると主張してくる人物が後になって登場しないとも限りません。なので、確実に実行すべきことは、引渡前までにきちんと未登記の増築部分について建物表題変更登記を完了してもらうことです。その上で、所有権移転の手続をし、増築部分も含めた一体の建物の所有者として自ら登記しておけば安心です。
売主さんにしても、悪気はないのです。ただ、一連の義務を果たしていなかったということであり、売却前にそれを完遂する責任があるということです。販売チラシに「増築未登記」の記載がある場合には、売買契約前に、売主さんの責任においてきちんと変更手続きを済ませてもらうということを確認するようにしましょう。