前回のコラムで登記の話をしましたが、登記簿謄本(全部事項証明書)はどのような構成になっていて、どんな情報が得られるようになっているのでしょうか。
不動産登記と登記簿謄本
不動産登記とは、その不動産がどんなものなのか、どこの誰が所有しているのか、また、その不動産で誰がどんなことをしたのか等を記録することであり、それらの記録がまとめられた台帳を「登記簿」といいます。この台帳をコピーしたものが「登記簿謄本」と呼ばれるものですが、現在はコンピューター処理されており、情報を直接印字した「全部事項証明書」が発行されます。
登記簿の構成は大きくわけると、表題部(ひょうだいぶ)と権利部(けんりぶ)の2種類に分かれます。最初に表題部があり、権利部が続きます。権利部は、さらに甲区(こうく)、乙区(おつく)に分かれていますので、結果、三部構成の台帳ということになります。
登記簿の構成と記載内容
表題部は、表示に関する登記を記録し、不動産の物的状況を示します。建物を新築したときは、一ヶ月以内に表示に関する登記を行うことになっており、それにより登記簿という新たな台帳が準備され、その台帳に表題登記がなされます。新築だけでなく、増築や取壊しなどにより物的状況が変化した場合にも、1ヶ月以内にその登記をすることが義務づけられていますが、これらの登記には登録免許税はかかりません。
権利部には、権利に関する登記を記録します。甲区は所有権に関する事項、すなわち所有権保存登記、所有権移転登記およびその仮登記ならびに処分の制限等に関する登記を記録します。記録内容は、所有者の住所・氏名・登記の目的・取得年月日と取得原因等です。乙区は所有権以外の権利、すなわち抵当権・根抵当権・地上権・地役権・賃借権等の設定・移転および抹消等の登記を記録します。登記の目的や原因・権利者などを記録します。
表題部の登記は法律で定められた義務ですが、権利部の登記は義務ではありません。申請主義に則り自ら登記した場合に限り権利部の記載が発生します。しかも所有権に関する登記申請には登録免許税という税金がかかります。
中には所有権が設定されていないものもある
土地や建物の所有者を特定するために、すべての不動産は所有権設定登記が為されているものと思っていたのですが、どうもそうではないのです。中には所有権が設定されていないものもありますし、設定されている所有者がすでに亡くなっている場合もあります。
不動産の取引をする上で、真の所有者を確認する作業は非常に重要なことです。基本的には売主側の仲介業者が確認すべきことであり登記情報はその裏付けの一つにはなりますが、それだけに頼りすぎると見誤ることもありますので、細心の注意が必要なのです。