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【福岡発】「新耐震物件=耐震性能が高い」とは言い切れない

築年数が示すもの

中古物件の購入を検討する場合、まずは築年数が気になりますよね。築年数が示すものとして考えられることは、「劣化の状況」と「新築時の建築基準法的遵守事項」の二つです。築年数によって建物の劣化状況は違いますし、新築当時に守らなければならない基準も違いますから、同じように見える物件でも、築年数で雲泥の差があったりするのです。

 

劣化状況

築年数が古ければ古いほど劣化のリスクが高まりますので、設備機器や内外装等の改修費用がかかる傾向にあります。もちろん、築年数は一つの指標に過ぎませんので、実際にどの程度傷んでいるかはインスペクションを実施してみないと正しく判断できません。築30年でも大きな問題のない物件もありますし、築10年未満でも雨漏れ事象が見受けられる物件もありますから、中古住宅を購入する際にはインスペクションは欠かせないのです。

 

耐震性能

続いて「建築基準法的遵守事項」です。建築基準法は建物性能を定義する最低限の基準です。建築基準法は必要に応じて改正が繰り返されていますので、築年数によって新築時の基準が違うこともあり、建物が保有する性能にも大きな影響を及ぼします。特に耐震性に関する基準は、大きな地震被害がある度に改正されており、その建物がいつ建てられたのかは耐震性能を量る重要な指標となります。

 

阪神淡路大震災の教訓を受けて建築基準法が改正されたのが2000年6月です。この基準が耐震性の現行基準となります。2000年6月以降に新築した物件で、リフォームによる間取り変更などがない場合は、耐震性については問題なさそうと判断できます。

 

2000年の主な改正内容は「壁の配置バランス」と「接合部の規定」です。逆に言うと、それ以前の基準で建てられた木造住宅は、壁の配置バランスが悪く、接合部にも適切な金物が設置されていない可能性が高いことになります。では、このような物件はいつ頃建てられたのでしょうか。「新耐震」と言われるものがこれに当たります。1981年6月~2000年5月までに建てられた木造住宅です。宮城県沖地震の教訓を受け、建物の強さ(壁の量)に関する規定が見直されたため、それ以前の建物と大きな性能差が見られます。が、新耐震であっても、2000年5月以前の建物は「壁の配置バランス」と「接合部」について問題のある物件が多いのです。基準になかったわけですから当然と言えば当然でしょう。

 

「新耐震」だからと言って、すべての物件が現行基準を満たすほどの耐震性があるわけではないのです。築20年を超える木造住宅を購入した場合、住宅ローン減税を受けるためには耐震基準適合証明書が必要となりますが、例え「新耐震」だとしても、そのまま証明書が取得できないこともあるので注意が必要なのです。